もう30年近く前に出た『愛が偽りに終わるとき』(1994年)です。最近のニュースで、山崎さんの婚約者だった勅使河原さんが今でも統一教会の代表的人物であることを知りました。その後彼女はきっぱりと絶縁してご活躍ですが、実は彼女の脱会を助けたのがわたしの本だったのです。週刊誌で脱会の理由を訥々と語る彼女の前には、『福音主義神学概説』が置かれていました。難解な神学書のどこにそんな力があったのかを知りたくて、自伝を読んでみました。ご本人が書いているところによると、「脳天を打った衝撃の一文」は、本文冒頭の「被造世界から神を知ることはできない」という福音主義神学の出発点だったそうです。それを読んだ途端に、「身体の中がカーッと熱くなったのを感じた」とか。総じてこの伝記は、統一教会への入会から、深くマインドコントロールされてゆき、やがてご家族の必死の思いで少しずつ目を覚ましていったプロセスまで、率直で明快、取り繕うところもなく、ご本人の性格通り、まっすぐでとても好感のもてる本です。世間を騒がせるこんなご時世だからこそ、お勧めします。