2020.12.23 今日の朝日新聞(夕刊)に「サンタクロースっているんでしょうか?」の記事を書きました。
もともとは1897年、ニューヨークの8歳の少女が新聞の投書欄に尋ねた問いです(MEDIAページ)。それに正面から社説で答えたのが、ニューヨーク・サン紙のフランシス・チャーチという記者です。アメリカで “Yes, Virginia,” と言うと、”There is a Santa Clause.” と続きの句が返ってくる。アメリカ人の友人たちに確認したら、やっぱりそうだと言っていました。でも、今の大人の世代までで、自分の子どもたちはそうでないかもって。わたしにとってこの記事は、新聞などのニュースメディアが子どもにも大人にも絶対の信頼を得ていた正統の時代の象徴です。
2020.12.16 拙著『不寛容論』が発売になりました!
長年の汗と涙の結晶です!(「著書」ページ)「不寛容論」というのは、不寛容を勧めるものではなく、不寛容なしに寛容はない、というパラドックスを示したものです。ロックやヴォルテールといった従来の「哲学者の回廊」のような寛容論ではありません、という内容表示でもあります。まあ、ちょっとだけ出版社側の販促意図に迎合したかも。
2020.12.10 ついに新著『不寛容論』の見本が届きました!
長年の汗と涙の結晶です。発売は来週12月16日。副題は「アメリカが生んだ『共存』の哲学」。帯の広告は→「不愉快な隣人」とどう付き合うか。『反知性主義』に続く、異形の政治思想史。宇野重規氏の推薦文がついています。宇野先生には、『波』でも最初の書評をいただく予定です。帯の後ろは→「エリートの欺瞞」に激怒した世界一偏屈なピューリタンが、「筋金入りの寛容」を生み出すまで。「社会の分断」を乗り越えるための政治倫理。
2020.11.29 今日からアドヴェントです。
クリスマスの前4週間は「待ち望む」時間で、教会の暦では世の中より一足早く新しい年のサイクルに入ります。この一年は、昨年の今頃には世界の誰一人として想像していなかったような一年になりました。人間は歴史を支配しておらず、理性は世界の駆動原理ではありません。新しい一年はわれわれに何をもたらしてくれるのか。宇宙は呻吟しつつ救済を待ち望んでいます。
2020.11.23 BS-TBSの「報道1930」という番組に出演しました。
解き放たれた陰謀論・源流はアメリカ建国に」という題で、先日の朝日新聞記事で「Qアノン」について書いたことがテーマで、中山俊宏先生とまたご一緒でした(MEDIAページ)。新潮社の堤さんもコメンテーターとして参加され、こういう番組もまた陰謀と受け取られるのではないか、いやこういう大手メディアのテレビ番組などそもそも視聴してもらえないのではないか、などの話をしました。バラエティでなく報道番組でまじめにQアノンを取り上げたのはこれが初めてだそうです。わたしはもう少しQアノンの疑似宗教的な性格に触れたかったのだけれど。
2020.11.19 泰山荘の YouTube ビデオが素晴らしいのでご紹介します。
アメリカ大統領選挙の結末をみていたら、このHPをアップデートするのを忘れていました。ICU の湯浅博物館が作成した「泰山荘」のビデオが秀逸の出来映えです。ぜひご覧ください。3分ちょっとの映像で、歴史から現在まで、先日精巧なレプリカが完成した「一畳敷き」を含む建築物の全体が美しく説明されています。「若干音が出ます」っていうから聞いてみたら、カラスの声と虫すだく音。静寂感がいっそう募るしかけで、心憎いばかりです。いいーなー。どこぞの大統領にもこういう文化を嗜むゆとりがあったらね。
2020.11.02 朝日新聞デジタルに別のインタビュー記事が掲載されました。
今度もアメリカ大統領選挙がらみで「サラダは嫌だ、ステーキだ 大統領選で動く福音派の正体」という題です。記者はICUの卒業生で、わたしの本をよく勉強してから研究室にやってきました。とてもわかりやすい記事になっています。でも、先週の記事が出た朝、学生たちに尋ねてみたら、100人いて読んだのは一人もいませんでした! とほほ。若者はもう新聞も読まないんだね。といってテレビを見るわけでもなし。何でもネットなのかな。今回の朝日新聞デジタルは、登録すれば無料で読めますので、ぜひみなさん読んでみてください。わたしの写真も、背景になったキャンパスの緑がきれいに撮れています。
2020.10.30 今朝の朝日新聞に「Qアノン陰謀論 米大統領選に影響?」を書きました。
わたしの部分は「社会の正統 揺らぎ台頭」という見出しです(MEDIAページ)。Qアノンとは、アメリカが影の政府「ディープステート」に支配されている、というトランプ氏のぼやきを対象化した存在です。こういう陰謀論は、現実変革の力になりません。というより、問題が解決されてしまったら陰謀論そのものが成立しなくなるので、変革への抵抗勢力になります。お隣はときどきご一緒になる中山俊宏先生。わたしのは正統と異端の議論で、中山先生のは主としてメディア論です。
2020.10.25 Jonathan Edwards Journal にわたしの新しいエドワーズ論が掲載されています。
イェール大学で久しぶりの「エドワーズ学会」に参加して発表したものが論文になって出版されました(ARTICLESページ)。発表後の質疑で Ava Chamberlain と Doug Sweeney に重要な示唆をもらいましたので、論文に組み入れてあります。あれはまだほんの1年前のことだったのか! 秋のニューヘイヴン、朝露に濡れた落ち葉、抜けるような青空、便利そうでなかなかつかまらない大学バス、おもてなしのテーブル、旧友たちとの再会、300年前の手書き草稿展・・・何だかずいぶん昔のように感じます。人はこうやって歳を取ってゆくのかな。
2020.10.20 毎日新聞オンラインに学術会議の任命拒否問題でインタビューが掲載されました。
「菅首相は『反知性主義』なのか 任命拒否問題で神学者・森本あんりさんが抱く違和感」というタイトルです(MEDIAページ)。税金が使用されているから、という発言がありましたが、だからこそ任命権者は自分の判断を介入させてはいけない――はずなんだけど。結局日本では、政治から独立した学問の権威が認められていないのです。知性主義のないところに、反知性主義はありません。学術ばかりでなく、芸術も宗教も、右でも左でも、何となく政治の権威にすり寄って一元化されてしまう。これは「正統」の問題ですね。
2020.10.13 青天白雲塾での講義。対面とリモートで5つの企業の方々と。
半年ほどのプログラムですが、今年は前半が『平家物語』だそうで、わたしは後半の最初に「応用編」ということで話しました(LECTURESページ)。企業の幹部候補研修にリベラルアーツ的な学びが取り入れられることは、今後の日本の経営者たちにはとてもよいことだと思います。先日 President Woman にわたしが書いたことを読んだ、という女性もおられました。たまたま目についた、といってコンビニであんな雑誌を買って読む人がいるというのも、何だか日本の将来が明るくなる話ですね。
2020.10.08 山口周さんとの対談「経営の足元を築くリベラルアーツ」が始まりました。
「『正統』が壊れたとき、コスモスに還る」という全体テーマで、8月に対談したものですが、全5回にわたって公開されます(MEDIAページ)。第一回は、「不条理を前に、本質的な問いを立て直す」です。毎週1つ公開されてゆくらしい。同じシリーズでは、直前にコミック作者のヤマザキマリさんやAPU学長の出口治明先生などが登場しています。山口周さんの語りも深いところで思索する言葉なのですが、こうしてわれわれの対談を5回にわけて読みやすく見せてくれる編集者にも拍手と感謝を。
2020.10.04 三菱UFJ信託銀行の社内研修プログラム。
わたしのアメリカ・キリスト教史を読んだ上で「アメリカ大統領選挙後のアメリカをどう見るか」というグループ発表がありましたが、みなさん日本の金融業界の今後を担うトップエリートで、さすがにそれぞれ優れた視点がありました。ここ数日で大騒ぎになっている大統領のコロナ感染については、間に合わなかったのが当然ですね。特に優れた発表をした女性がいたと思ったら、なんと卒業生でした。アセモグル・ロビンソンの『自由の命運』も課題図書になっていました。
2020.10.02 President Woman という雑誌に「ポストコロナ時代の教養」について書きました。
「大転換の時代、10年後のキャリアを支える教養とは」というテーマで、経済・歴史・マネー・IT・哲学・SDGs・政治学・国際情勢・宗教・リーダーシップという10項目が続きます(MEDIAページ)。おそらく、コロナで巣ごもりになった時間を有効活用して教養を身につけましょう、というラインだろうと思います。執筆者たちもそれぞれ斯界の達人ばかりですが、その冒頭で「教養はアクセサリーみたいに身につけられるものではない」と書かれたのでは、やっぱりやりにくかったでしょうね。大学経由で来たのでお引き受けしましたが、本来これは学務副学長の仕事だろうと思います。
2020.09.25 ICU Weekly Giants の記事が面白いよ。
ICU教授陣の「私の一冊」>という記事です。今回は第1回として、人文科学デパートメントの先生編らしい。わたしが書いたことは以前に別の媒体(『創文』)で発表した中身ですが、もう廃刊になってしまったので(悲しい)、今の学生たちにも読んでもらいたいと思います。みなさんにも、人生を変えるような1冊との出会いがいつかどこかでありますように。
2020.09.23 ADOBE社の一方的な契約条件変更にご注意を。
こんなメールが届きました。「アドビアカウントへのログイン履歴が、1年以上確認できません。そのため当社ポリシーにしたがい、お使いのAdobe IDの有効期限を本日より60日間までとさせていただきます。この期間にログインをしていただけない場合、お使いのAdobe ID は無効になり、サーバーに保存したコンテンツへのアクセスができなくなり、アカウントが閉鎖されます。」わたしは製品購入時にこんな契約をしたことはありません。勝手に「当社のポリシー」を変更しておいて、ログインを求め、ログインの際に新たな契約変更に同意することを求めるのは、不当です。大企業の法務に個人が対抗できないことを見越した態度ですが、一方的な不利益変更に同意する必要はありません。「お客様が特定の本サービスまたは本ソフトウェアに関して、アドビとの間に別の契約を交わしていて、当該契約書が本条件と相反する場合は、当該別契約の条件が優先されます。」
2020.09.19 NHK文化センターの講座が再開になりました。
大統領選直前!アメリカの論理をキリスト教から理解する」【オンライン】です。ほんとは今年の初め頃に予定されていた2回の講座ですが、コロナ問題で延期になり、結局アメリカ大統領選挙の時期になってしまいました。といって選挙は誰が勝つかなどの予測をするわけではありません。そういうことは、新聞記者にまかせとけばいいのです。わたしの務めは、ニュース解説みたいな話を超えて、もう少し広い歴史的視野を提供することです。
2020.09.10 昨夏の丸山眞男記念講演会の内容がオンラインで読めるようになっています。
わたしの報告「L正統とО正統――キリスト教史からの批判的検証」と、馬場紀寿先生と中田喜万先生との共同討議「合評会 質疑応答」との両方です(ARTICLESページ)。フロアからの重要な質問も入っています。どうぞご覧ください。編集を担当いただいた山辺春彦先生(東京女子大学丸山眞男記念センター)のご努力に感謝を申し上げます。
2020.09.04 科研費の英語表記を悪用したハゲタカ出版に気をつけましょう。
Predatory publishing といっても Vanity Publishing といってもあまり変わりません。最近のは Impact というイギリスの会社です。日本語でメールが届き、あなたの科研費プロジェクト(英語名)はすばらしい内容なので、ぜひわが社で出版させてください、と言いながら、若干の料金がかかります、というやつ。これに載せた人は、悪質な詐欺の犠牲者であるばかりか、新しいカモを誘うときの前例として使われるので、詐欺の加担者です。東京大学で気候変動を研究しているナカムラさん、大阪大学でナノファイバー医療をやっているシモムラさん、名古屋大学未来ナントカ研究所のハラダさん、あなたがたの出版物は学術を装ったビジネスで、非倫理的です。日本学術振興会にも連絡しましたが、まだお返事はありません。
2020.08.30 山口周さんと対談しました。わたしの本もよく読んでおられ、楽しくて刺激的な対談でした。
対談の後で知ったのですが(すみません)、山口さんの著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』は20万部も売れた大ベストセラーだそうです。すげー。授業の準備に追われていて、28日のことでした。ご本人のツイッターにも出ていました。「読書時間」というところに、「役に立たない読書」のイチ押しとして、わたしの本を上げておられます(「著書」ページ参照)。ウム、ここは喜ぶところでしょう。
2020.08.25 『東大塾 現代アメリカ講義』が出ました。
毎日暑いですね。今年はコロナ騒ぎで卒論合宿もなくなり、卒論生はかわいそう。もっとかわいそうなのが新一年生です。やはりICUはキャンパスに来ないと入学した意味もわからなくなってしまうでしょう。なお、アメリカ研究を志す学生には、今度出た『東大塾 現代アメリカ講義』をお薦めします(「著書」ページ)。
2020.08.16 今朝の読売新聞に「始まりの1冊」というコラムを書きました。
エドワーズの存在論と救済論を書いた、いちばん最初の本の頃のことで、ちょっと寂寞とした思いがあります(MEDIAページ)。あのころはひたすら勉強していたな、という感じ。「毎日を半分の自分で生きていた」という表現は、残り半分の頭をずーっと勉強に費やして凝縮した時間を過ごした人なら、きっとわかってもらえると思ったけれど、別の言葉にしました。当時の写真を探すのにも苦労しました。まだデジタル時代じゃなかったし、書生っぽい昔の雰囲気なんて、みつからない。一つだけ、たぶん並木先生たちと南アルプスで合宿した時のがありました。1994年の夏だったと思います。
2020.08.06 『東大塾 現代アメリカ講義』が今月下旬に出ます。
トランプのアメリカを読む」という副題がついています。わたしはその第1講「宗教からみたトランプのアメリカ――反知性主義・陰謀論・ポスト真実」を担当しました。もう2年以上前に「グレーター東大塾」というところで話したもので、ちょっと出版に時間がかかりすぎた感じですが、まあ出てよかった。文中に出てくるアナトール・リーヴェンの本、誰か訳してもらえるといいのだけれど、立候補する人いませんか。
2020.07.23 ICU 湯浅八郎記念博物館の You Tube 映像ができました。
学芸員による館内紹介ビデオ。わたしも一部関係しています。4分07秒あたりからの「先生のたからもの」というコーナー。「もっているお宝を紹介してください」と言われたので、戦後すぐに発刊されて日本ではなくアメリカで入手したエドワーズの和訳本と、森有正の『ドストエフスキー覚書』、というかそこに挿んであった古い白黒写真を出しました。パリのリュクサンブール公園のベンチに、森有正が座ってじっとこちらを見つめています。もう40年くらい前にいただいたもの。
2020.07.18 映画「グレース・オブ・ゴッド――告発の時」のコメントを書きました。
2019年のフランス映画で、現在も係争中のカトリック司祭性的虐待事件を扱っています(MEDIAページ)。わたしが「現代ビジネス」というウェブ雑誌に書いた記事「50年間続いてきたカトリック教会「性的児童虐待」の深い闇――なぜ教会は対応を誤ったのか」を探し当てて依頼してきたので、まあ何も知らない人に変なことを書かれるよりいいか、と引き受けました。でもね、映画は誰かを告発してやっつける、という話じゃなくて、何十年も経ってからようやく口を開いた被害者たちが自分と尊厳を取り戻してゆく話なのです。家族の愛とか人生の哀しみとか。それに、いい歳をしたオッサンたちが涙を流して語る姿が真に迫っていて、ジェンダー視点からも面白い。しっとりしたとてもいい映画で、お薦めです。
2020.07.16 先日の月刊誌 Voice インタビュー記事が WEB でも公開されました。
こちらは、PHP 総研という政策シンクタンクのページです。「民主社会の正統性が問われている」(MEDIAページ)。それと別に、同じ記事がWeb Voiceに2つに分けて掲載されています。(1)「宗教は自分を納得させるための物語――カミュの『ペスト』に見る、宗教と疫病の意外な関係」, (2)「宗教は科学の代わりにはならない――コロナ禍で変わる信仰の役割」。こちらはカメラマンの遠藤宏さんに撮ってもらったわたしの写真つき。
2020.07.11 月刊誌 Voice にインタビュー記事が載りました。
今月号は「新常態を制すリーダーの条件」がテーマだとかで、わたしはカミュの『ペスト』を再読しながら、宗教とパンデミックの関係を書きました。コロナや原発や不況は、自然や社会や人間が想定外のリスクを内包していることを思い起こさせてくれます。合理的なコントロールや設計が可能だとする思想は、時代遅れの知性です(MEDIAページ)。
2020.07.08 日経新聞電子版と日経 QUICK ニュースという媒体とに記事を書きました。
米社会、正統性への信頼に揺らぎ」というコラムで、「コロナ後の資本主義」が全体テーマです(MEDIAページ)。わたしはトランプの「ディープ・ステート」論、6月1日の教会前での写真セッションへの批判、プリンストン大学がウッドロウ・ウィルソン・スクールの名前を変えたこと、リベラル資本主義には経済活動の基本的前提としてシステムの正統性への信頼が不可欠なこと、などを書きました。有料会員でなくても登録すれば読めるみたい。
2020.07.04 久しぶりの不識塾。というより、講演することも久しぶり。
この3ヶ月ほどは、予定されていた学会や一般向けの講演が次々とキャンセルになりました。授業もずっと画面越しだったし、学会ですら先日はオンラインで講演を聴いただけなので、実際に対面で話し、その場でディスカッションをしたのはほんとに久しぶりです(LECTURESページ)。今回は受講者も30名に限定し、広い会場で机の間隔も空けて座りましたが、それでも一緒に集まってお互いに顔を見ながら話し合うということは、つくづく幸いで心地よいものです。課題図書はわたしの近著2冊と『自由の命運』(上下)。金融や製造や通信など大手企業の部長職にある方々ですが、みなさん実に勉強熱心で、11月の大統領選挙に向けたアメリカ独立記念日にふさわしい討論でした。
2020.06.28 「山下ゆの新書ランキング」っていうところによい書評が・・・
西東京市在住の私立高校の社会科教員」という人が、通勤途中に読んだ新書を紹介するブログですが、2年前に出した『異端の時代』をすぐに書評してくれていました。章ごとに内容を追って正確に要約してあります。しかも、「今後、大学入試の問題などでも使われていくのではないでしょうか」とあり、たしかに現在までの多くの入試採用を言い当てています。その予言の根拠は、「日本の批評の伝統を受け継ぐ叙述スタイル」で「保守」を論じているからだとか。拙著の的確な書評もありがたいが、このブログは2005年から続いていて、どの一冊も手を抜かずていねいに扱っています。それだけでもすごい。
2020.06.15 『異端の時代』が『ピューリタニズム研究』で書評されました。
長年の同志有江大介先生(横浜国立大学)による書評です(「著書」ページ)。出版から2年近くになりますが、この書評はとても嬉しい。拙著を丹念に深く読んだ上に、がっぷりと四つに組んで対話しているからです。若き日の丸山読書体験など、評者自身の知的遍歴にも触れられており、わたしの言いたかったことを正確に理解して射貫いています。有江先生、いつも「オレは世俗の極北を行く男だ」とかカッコつけていますが、まさにそれが「お釈迦様の掌の上」です。ははは。イエズス会の神父さまの教えがよほど効いていると見える。
2020.06.10 延期されていた映画「SKIN/スキン」がようやく公開されることになりました。
コロナ感染防止で公開が延期されていた映画「SKIN/スキン」が、6月26日(金)にようやう一般公開されることになりました。映画の公式ホームページで、わたしのコメントも公開されています。コメントを依頼された時には、どうしようと思いましたが、実際に観てみると、深く心を揺さぶられます。愛することで弱みをもつ。けれども、その弱みこそが人を強くする。凄惨な暴力に満ちた映画ですが、実は愛する者のために新しい自分を作ってゆく、魂の再生の物語です。お薦めします。
2020.06.03 スティーヴン・キングを特集した KOTOBA(集英社)が出ました。
KOTOBAに書いたのは2度目かと思っていたら、最初は『異端の時代』の著者インタビューでした。それにしてもキングって多作ですね。しかも名作揃い。だから論者もいろんな分野の人が思い入れたっぷりに書いています。わたしのは、『キャリー』に出てくる「根本主義的キリスト教」の話です。セクシュアリティを悪魔視する母親の原型は、実はおおかたの想像と違って最近の福音派ではなく、アメリカ・キリスト教の歴史に深く刻印づけられているパターンだ、という話(MEDIAページ)。
2020.05.23 クワズイモ (Alocasia Odora) の花が咲きました。
なかなか咲かない珍しい花だそうです。うちでは何年も象の耳みたいに大きな葉っぱだけでしたが、今年初めて花芽が出ているのに気がつきました。花穂はトウモロコシとロウソクが合わさったみたいな形で、仏炎苞に包まれています。匂いで誘った昆虫を閉じ込めて受粉させるのだとか。だからその匂いが強烈。学名にも “odora” がついています。甘い匂いだという人もいるけれど、わたしには納豆みたいな匂いです。花をつけるのは、株が充実している時か、あるいは死んで次世代に種を残す準備をしている時か。どっちかな。
2020.05.22 『反知性主義』がまた増刷になりました。何と16刷です。
これもこのご時世にありがたい話です(「著書」ページ「単著」)。コロナ「巣ごもり」の効果かな。よく編集者には「ベストセラーよりロングセラー」と言われますが、2015年の初版以来、ほんとによく読んでいただきました。累計はすでに 30000部を超えていますが、最近はそれと別に電子書籍もがんばっているみたい。ありがたや。
2020.05.16 山川出版社の『アメリカ史研究入門』が3刷になりました。
初版が2009年ですから、もう10年以上前の本です(「著書」ページ「共著」欄)。今回はわたしの章は変わりませんが、資料編として橋川健竜・梅崎透・中野聡の各先生がデジタル化された資料やアメリカ史の研究文書館について、研究者となる人の身になった解説を追加してくれてあります。(←よくみたら、これは2版にも付いていました。)
2020.05.12 読売KODOMO新聞の「俺はググらない」少し長めのお答えがウェブ版が出ています。
優しくしてあげる必要なんかありません 意地悪をされたら、怒りなさい…」4月30日の紙面に出たのは、そのごく一部を編集部でまとめてくれたものです。「キリスト教の視点から、というのを無理に出すと、どうしてもつまらないものになってしまいます」と答えた経緯も書かれてあります。自分自身の経験も、多少ふりかえりながら考えて書いたものです。
2020.05.09 昨年の丸山眞男センターでの講演記録と質疑応答が公刊されました。
丸山眞男の「L正統とO正統」論をキリスト教史から批判的に検証したもの(ARTICLESページ)ですが、東京女子大学の丸山記念センターで全文が公開されています。質疑応答は内容的な議論が交錯して活気があったし、今文章で読み返してみると、馬場紀寿先生の仏教における正統と異端論が面白い。一部は和辻哲郎の仏教観に重なるけれど、教義だけでなく儀礼も含めて考えるべきだ、というのは実にその通り。ところで、わたしの「批判的検証」は、どうやら十分に批判的ではなかったみたい。
2020.05.01 読売KODOMO新聞にわたしの相談回答が載っています。
みんなの質問箱――俺はググらない」というページで、今回は「どうして意地悪な人にも優しくしなくちゃいけないの?」という相談でした(MEDIAページ)。読売側の意図としては、「右の頬を叩かれたら左の頬を差し出せ」というキリスト教的な教えからの答えを想定していたようです。そういうお仕着せの出来レースなら誰か別の人に頼んでくれ、とお返事したら、自分の考えで書いてほしいというので書きました。もう少し長い回答がウェブに載っています。紙面では、隣に壇蜜さんのうっとりする写真が載っててウレシイ(おいおい子ども向け新聞だぞ)。
2020.04.24 「みらいぶっく」というウェブサイトにわたしのことが載っています。
みらいぶっく 思想史」分野で「鉄人」だそうです。よくカリフォルニアで名前を言うと、「オー、あの<料理の鉄人モリモト>の親戚か?」と聞かれたけど、ついにわたしもホンモノの鉄人に!わたしの著書も解説されています。誰がどうやって決めたのかわかりませんが、よく見ると「河合塾」みたい。最近大学入試によく使われるからか。それとも、4月になって科研費の発表があったからかな。説明文はまともで、どうやらわたしが学内向けに書いた文章を参考にしている。――もっとよく見ると、トクヴィルと森有正と丸山眞男の本が挙がっているし、「おすすめ海外大学」はICU関連の小規模リベラルアーツ大学ばかりだし、こりゃ絶対卒業生の社員ライターだな。
2020.04.21 『異端の時代』がまた大学入試に使われました。合計6つの大学でそれぞれ。
よほど入試に使いやすい文章なのかな。使われた場所もいろいろですが、結論部が多い。群馬大学、千葉工業大学、順天堂大学、目白大学、神田外語大学、広島工業大学。2020年度の入試問題として、各大学ではホームページで次年度の受験希望者に公開されるようです。最近ようやくわかりかけてきたのは、直接大学から来るのが入試問題としての二次使用で、「日本著作権教育研究会」とか「駿台」とか「教学社」とかから来るのは、それを入試問題集として刊行する三次使用だということ。
2020.04.19 Corona Watch3: テレワークばっかりで、着る服がほとんど不要になる。
ワイシャツとかも着ないので、クリーニング屋さんは大困りでしょう。腕時計もしない。髭も剃らない。退職するとこうなるのかな。他に減ったもの=空き巣、掏摸、新聞のページ数。これらの業界もお困りかと。新聞はしばらく前から掲載広告も折り込み広告も減っているので、だんだん深刻になるでしょうね。購読料どうなるのかな。増えたもの=本の宣伝、散歩の時間、ウェブ技術者の需要。増えるはずなのにぜんぜん増えないもの=執筆の時間。
2020.04.14 『異端の時代』が4刷になりました。
発行してからもうすぐ2年になるのに、増刷されるのはとてもありがたい。どんな人に読まれているのかな。大学入試問題かな。増刷は3月中に決まったので、学生ではないでしょう。最近では、新著の発刊と同時に電子書籍も販売するようになり、その売り上げ報告もときどき入ってきます。『宗教国家アメリカのふしぎな論理』も(NHK)『異端の時代』(岩波)も『キリスト教で読むアメリカ史』(角川)もダウンロード数が出てきますが、やはりこの種の本はまだまだ印刷本の方が多いですね。
2020.04.11 Corona Watch 2: 新聞の書評欄がみなつまらなくなる。
今朝の朝日、書評委員の先生方には申し訳ないが、どれも「ああ面白そうな本だなあ」と思わせる力がありません。4月で委員が交代したばかりから? いえ、これもコロナ禍のひとつです。なぜ面白くないか。みんな自分の専門の話をしているから。Shop-talk です。専門外の本を読んで、自分も新しい発見に目を開かれて、みなさんもぜひ読んでみてください、っていう気構えがないからです。これは、他人との交流がないひきこもりの影響です。他流試合がない。こういう時代にこそ、リベラルアーツの学びが必要です。
2020.04.06 Corona Watch 1: 子どもが毎日近くの公園とかで愉しそうに遊んでる。
それも、たいていお父さんと一緒。子どもとの時間に慣れずにぎこちないお父さんたち、突然与えられた休暇をどう過ごしてよいかわからず、妻に追い立てられて子どもと公園へ。テレワークも遠隔授業も、結局はこーゆーことです。でも、子どもたちが何もない公園で走り回っているのを見ると、こっちの気持ちも明るくなります。あの頃は憂いもなく、ただひたすら毎日が愉しかったな、という追憶。「今日は何して遊ぼうかな」という夏休みのはじめ頃みたい。まあ、これも後から作られた記憶かも。
2020.03.27 朝日新聞の武蔵野版に「mal”」の記事が掲載されています。
でも、何で「武蔵野版」の紙面なんだろ。「喫茶店の常連客、文芸誌創刊――品川の隣町珈琲、内田樹さんら原稿寄せる」というリードで、平川さんや小田嶋君が編集会議をやっているところの写真がついています。「武蔵野版」っていうより、「東京版」という理解かな。他に「文化人23人」の小説やエッセーなど。わたしは文化人じゃないけど。
2020.03.20 隣町珈琲の文芸誌「mal”」(創刊号)が出ました。
小田嶋隆君との長年の付き合いで寄稿することになりました(MEDIAページ)。でもこの雑誌、タイトルを何て読むのかわからない。編集長の平川克美さんによると、「マル」と読むらしいが、その後に付いてる「”」って何のことかわからないし、表紙にも書いてある「悪い兄弟」は形容詞で mauvais だし。。。まいっか。荏原中延の喫茶店から出ていて、久しぶりに行ったら高校生時代を思い出しました。ミニコミ誌といっても、ずいぶん立派な作りです。わたしのエッセイは、”churn” という言葉からにじみ出るアウラについて、リバイバルとチーズ作りと関西弁と第三イザヤの神学。
2020.03.12 文部科学省へ。なぜ英語のシラバスを日本語に翻訳しなければならないのですか。
シラバスは学生のために書かれるもので、英語で出される授業のシラバスは英語で書かれており、学生に日本語訳は不要です。文科省が教職課程の授業内容の適切さを判断することが可能で必要だとしても、それは文科省の業務です。文科省がグローバル化していなくてお困りなら、そちらで翻訳をご依頼ください。もし授業担当教員にそれをお願いするなら、余分な業務ですので、相応の対価をお支払いください。わたしに頼むと高いよ。
2020.03.04 拙著『異端の時代』がまた大学入試に使われました。
今度は大坂の大学です。試験の内容としてはかなり難しいように思いました。正統と正典のどちらが先にできたか、という議論で、紀元2世紀頃の「マルキオン」や「ムラトリ断片」などという専門家向きの固有名詞も出てくるし。しかし、わたしの言いたかったことがはっきり出ている箇所で、それを取り上げて試験問題にしていただいたのは、とてもありがたいことです。
2020.02.27 卒論発表会+打ち上げが終了。何だかわたしのシラバスが7000リツイートになっているとか。
発表会は14人、打ち上げは10人。新4年生もいましたが、他大学からこのHPを見ただけで参加してくれた人もいました。ナカムラ君、来てくれてありがとう! このHPも意味あるんだね。わたしはツイッターとかやらないので知りませんでしたが、何とわたしの書いたシラバスが話題になっているのだそうです。このセノネース君は、ICUでラテン語とギリシア語を学んでいるようですが、そういう学生がいるのはほんとに嬉しいね。
2020.02.20 早稲田大学の入試問題に拙著『異端の時代』が使われました(使用許諾済み)。
2020年度の「国語」(帰国生入試・外国学生入試)です。よい問題だと思います。わたしが満点とれるかどうかわからないけど。試してみたい人は、ここに問題がありますのでどうぞ。
2020.02.12 卒論発表会を行います。2/26(水)4-6時:ICUオスマー図書館1F。どなたでも歓迎します。内容は以下の通り。
・「人権はどこまで寛容たり得るか:マイケル・イグナティエフのミニマリズム論」 (English)
・「印刷の発展は宗教改革を必要としていたのか」
・「経済活動と人間本性」
・「ラインホールド・ニーバーとアメリカの社会問題」 (English)
・「基督教独立学園の思想と教育」
・「和解の神学者ジョージア・ハークネス:ICUを中心とする日本滞在の軌跡」
2020.02.06 集英社の「新書プラス」というコラムに拙著『異端の時代』が紹介されています。
集英社新書プラスの「ピックアップ」というウェブページです。お隣に並んでいるのは、『羽生結弦は捧げていく』と『徳光和夫の昭和プロレス夜話』。わたしの本は岩波新書なのに、他社の本まで紹介してくれるのは、とってもありがたい。これは発刊直後になされたインタビューの再録ですが、編集者が面白くて、拙著に出てくる「マルキオン」「オリゲネス」「ペラギウス」といった神学者の名前を「怪獣の名前としか思えない」と言われたのはよく覚えています。でっかいカラーの著者近影はあんまりお薦めできないけど。集英社新書は、トニ・モリスンの『「他者」の起源』もどうぞお読みください。
2020.02.01 『世界』に執筆した拙稿が朝日新聞の「論壇委員が選ぶ今月の3点」に入っています。
。。。と教えられて見てみました。「論壇委員が選ぶ今月の3点」で、内田麻理香さんの記事です。この方は、サイエンスライターという肩書きで、実に多彩な本を書いておられます。いずれも楽しいイラスト入りで、カソウケン(家庭科学総合研究所)?っていうウェブサイトもあります。他に、沖縄タイムズにも共同通信配信の記事が載りました。
2020.01.27 拙著が今度は中学3年用の入試参考書に使われました。
日本入試センターの SAPIX という教材。使われたのは『異端の時代』で、しかも思想史的な知識を前提とするかなり難しい部分です。子どもや青年のナイーヴな全能感がそのまま大人になったような人がいますが、親や教師もそれをたしなめることができず、結局は無責任な「あなたがそう思うならそうしなさい」的対応になる、というところが共感されたのかな。ものわかりのよすぎる親は反発のもってゆき先にもならず、子どもはますます自己責任で圧倒されてひきこもってしまう、という話。
2020.01.19 百年前の今月、アメリカで禁酒法が施行されました。
憲法修正第18条がアルコール飲料の製造・輸入・販売を禁じたからです。でも、飲酒自体は禁じられませんでした。これはピューリタン道徳の表現ではありません。問題は酒を売って人びとを中毒にさせて金を搾り取る酒場経営者でした。だから議会も大衆もその禁止に賛成したのです。新聞はベルサイユ条約の批准をめぐる大激論で、あまり注目もされませんでした。
2020.01.11 初期アメリカ学会の新年会。例会は小檜山ルイ『帝国の福音』をめぐる合評会。
ちょうどアメリカ学会の書評を頼まれていたので、わたしが司会とコメントを担当しました。400頁もある大著で、著者の長年の研究成果が詰まっていますが、実は恐ろしい本です。あたかも、夜店で買ってきたかわいいヒナを大事に大事に育てていたら、だんだん大きくなって、ついにある日恐ろしいモンスターとなっていた、みたいな。アメリカのファンダメンタリズムがどうして現在のトランプ陣営のようになってしまったのか。その変質が海外伝道という舞台で起きて波及していったことを跡づけています。
2020.01.07 雑誌『世界』に「フィクション化する政治」という特集で論文を書きました。
人間はシンボルを操作する動物だ、というカッシーラーの議論を軸に、なぜ人はファクトよりフェイクに惹きつけられるのか、という話です(ARTICLESページ)。「事実」よりも「一貫した世界観」を求める、というアレントの全体主義論は、すでにあちこちで話したことですが、カッシーラーの人間論をしばらくまとめて読むことができたのはよかった。他には文学畑の斎藤美奈子さんと円城塔さんで、切った張ったの現代世界を論じる雑誌としてはちょっと異例の取り合わせが面白い。
2020.01.01 あけましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いします。旧年中はみなさまたいへんお世話になりました。記事はアーカイヴに移しました。新しい年がみなさまにとって新しい飛躍の年でありますように。