尾原宏之著『「反・東大」の思想史』(新潮選書)は、『考える人』に連載されたものをまとめて今年出版された好著です。著者ご友人の河野有理さん(法政大)と対談書評をいたしました(「前編 東大の学費は値上げすべきなのか?」「後編 政治家が高学歴化しないのは日本の知的伝統?」)。河野さんは学部も大学院も東大ですが、東大卒の人は東大批判が好きなのだとか。わたしはもちろん東大を含む日本の大学制度そのものに強い拒否感と嫌悪感をもっておりましたので、『反知性主義』にからめて対談させたら面白いんじゃないか・・・って結局某新潮名物編集者の販促戦略かい! 対談そのものは河野先生のおかげで実に面白かったし、わたしは江戸時代に遡る日本の反知性主義的な風土に気づかされて大いに学びました。尾原さんの本もいい。特に冒頭の慶応と福澤の話など、現代の伊藤塾長の発言とも重なっていて、まことに刺激的で啓発的な一冊です。