HRe 251J キリスト教倫理 II Winter 04-05, *5/TuF (15:10-16:55), H-204, A. Morimoto
 
 
COURSE DESCRIPTION:(要覧)
 
「キリスト教倫理の主要問題および現代の諸問題に対するキリスト教倫理の接近のしかたを考察する」
 
 
TOPIC THIS YEAR:「原理主義と宗教間対話」
 
今秋のブッシュ大統領再選には、キリスト教原理主義(ファンダメンタリズム)といわれる人々の後押しがあったことがしばしば報じられている。原理主義は、20世紀初頭のアメリカに始まったものであるが、現在では「イスラム原理主義」や「ヒンドゥー原理主義」など、諸宗教を通じて見られる現象として理解されるようになった。これら宗教横断的な原理主義には、果たして共通の特徴があるのか。排他的で危険な原理主義と、そうでない平和でリベラルな宗教とは、いったいどこで袂を分かつのか。いやそもそも、宗教というものは、どれも結局は原理主義へと傾斜してゆくのが本性なのではないか。現代社会は、世界の平和と人類の共存を考えるうえで、この問題を避けて通ることができない。原理主義者たちの過激な宗教性は、ただ近代世俗主義の原理に基づいて批判していればおのずと消え失せて行く、というものではない。彼らの思考パターンは、一見原点への復帰であるかに見えるが、実はきわめて近代的なのである。その限り、それはわれわれにもけっして無縁なものではない。宗教間対話は、迂遠で密儀的な教理問答の時代ではなく、そもそも対話の可能性をどのように確保するかというメタ・レベルのテーブル・セッティングを問う時代に入っている。大気の冷たく澄み渡る冬の日々、自己と世界の内面をじっくりと見つめ直す時をもちたいと思う学生諸君は、腰を据えてこの授業を取ってもらいたい。
 
 
CLASS SCHEDULE:
 
 12/7 授業の概要説明・文献紹介
 12/10 近代的概念としての「原理主義」
 12/14 アメリカの「原・原理主義」
 12/17 2章「プロテスタントの原理主義」
 12/21 アンナ・フロイト『自我と防衛機制』
 1/7 (No Class -- conference in Seattle, WA)
 1/11 (No Class -- conference in Seattle, WA)
 1/14 4章「イスラームの原理主義」
 1/18 6章「アジアにおける原理主義」
 1/21 (+*6) 「宗教間対話」「宗教本質論」
 1/25 「言語文化類型」「宗際倫理的討論」
 1/28 (+*6)  ゲスト:西谷幸介先生
 2/1 8章「環境派原理主義」
 2/4 (+*6)
 2/8 WCスミス「信ずるという異端」
 2/11 (National Holiday, Entrance Exam)
 2/15
 2/18 (No class -- official engagement)
 2/22 総括
 
 
COURSE REQUIREMENTS:
 
1. みなさんの授業参加を促すため、毎週 Response Paper を書いてもらいます。受講生全員のメーリングリストを作りました。アドレスは<********>です(学外から受講している方は、私宛にご自分のアドレスを送って下されば、メーリングリストに追加します)。毎週火曜日の授業終了後、木曜日午後4:00までに、私の指定する題で、1,000字から2,000字までの長さのコメントを提出すること。長すぎると1頁に収まらなくなるので注意。印刷に回すため、遅れて提出されたものは受け取りません。自動振り分けを使いますので、メールの「題名」ないし「件名」(Subject) に<HRe251>と入れてください(大文字でも小文字でも大丈夫)。また、添付文書ではなく、メール本文に<テキスト>形式で直接書くこと。受け取ったものは、そのまま印刷してクラス全員に配ります。
 
2. 学生の発題は、受講生の数にもよりますが、全員にというよりも、何人かの方に特定の題でしてもらいましょう。提案があれば歓迎します。
 
3. 講義や討論を踏まえ、授業で扱われた諸問題について、問題の設定と自己の論旨を明確にした期末レポートを書くこと。詳細は授業の進行につれて決定します。長さはA4用紙10枚以内。
 
 
EVALUATION:
 
成績の配点は、Response Paper が3割、発題やディスカッションを含む授業への貢献度が3割、それに期末レポートが4割の割合です。前回類似のテーマでこのクラスを出したのは 2000 年冬学期でしたが、その時のグレードは、A=16人、B=13人、C=11人、D=2人、E=3人で、計47人、GPA=2.70 でした。
 
 
REFERENCE:
 
主としてこの2冊を使います。三省堂に仕入れを頼んでおきます。
 
 ・西谷幸介『宗教間対話と原理主義の克服』(新教出版社)\1,900-
 ・フート『原理主義――確かさへの逃避』(新教出版社)\2,800-
 
その他に、以下の書物への言及があります。特に最初の一冊は重要。
 
 ・デコスタ『キリスト教は他宗教をどう考えるか』(教文館)\3,500-
 ・リンドベック『教理の本質』(ヨルダン社)\3,200-
 ・田丸・星川・山梨『神々の和解』(春秋社)\2,500-
 ・ヒック・ニッター編『キリスト教の絶対性を超えて』(春秋社)\3,900-
 ・ユルゲンスマイヤー『グローバル時代の宗教とテロリズム』(明石書店)\3,800-
 ・アンナ・フロイト『自我と防衛機制』(岩崎学術出版社)
 ・Wilfred Cantwell Smith, The Meaning and End of Religion (Fortress Press, 1991)
 ・idem, Believing: An Historical Perspective (Oneworld, 1998)


(3/8/2005 付記)

・今回はやや難しい主題でした。そのため、全体の成績は、A=2人、B=9人、C=4人、D=2人、E=1人の計18人で、GPA=2.50 という、私の全クラス史上最低の数字になりました。初めてのテーマで自分の授業運営の未熟さもあるので、もう少し甘く点をつけてもいいかな、とも思いますが、他の授業の実績と比較すると、やはりこれが妥当な評価だと思います。


最優秀レポート

・事実、なかには非常に優れた期末レポートもありました。そこで今回は、そのうちの一つをこのホームページ上で紹介することにしました。他の受講学生は、これを読んで(ハタ迷惑なやつだと思いつつ)ますます精進してください。
最優秀レポート: 「原理主義および宗教間対話について」 川坂和義 (なお、このレポートの著作権は、執筆した学生本人にあります)