HRe206J 神学研究 II

Winter 2005-2006, H-307, TuF/5*, A. Morimoto

OBJECTIVE

テーマ: ICUで教えた二人の世界的神学者

 あなたは、エーミル・ブルンナーをご存じですか。戦前戦後を通じて、世界中にその名を知られた神学者です。スイス・チューリヒ大学の総長にもなった人ですが、それを2年間も休職して、荒廃した戦後日本に新設された小さな無名の大学――つまりあなたのいるこの大学――に教えに来た人です。世界中の人々が彼の著作の続きを待ちわびる中、彼は全力を尽くしてICUの学生たちに教えました。ブルンナーはいったいどこで何をしていたのか。世界の人々がそれを知ったのは、ようやく10年後に出た彼の著作の序文によってでした。

 あなたは、ジョージア・ハークネスをご存じですか。1957年、ICUは第一回の卒業式を執り行いました。そこで式辞を述べたのが彼女です。この人は、多くの偏見を克服して、アメリカで最初に神学の教授となった女性です。そして、その貴重な研究休暇に、彼女はICUに来てあなたがたの先輩たちを教えたのです。徹底した平和主義者であった彼女は、第二次大戦の終了前から「国際連合」の創設を論じ、その設立準備委員としても働きました。現在アメリカでもっとも著名な女性神学の教授講座は、彼女の名を冠したものです。

 実は、わたしも二人目のことはよく知りません。受講する学生は、わたしと一緒に彼女の足跡を辿る旅に出ることになります。まずは、資料を集めることから始めなければなりません。ICUのアーカイヴにも、おそらく記録が残っているでしょう。それは、既存の文献にはあまり出ていない事実を発掘する作業になるはずです。インターネットを駆使して、彼女の神学的倫理を探り、国際平和の問題にキリスト教神学がどのような発言をしたのか、を検証します。したがって、このクラスは、必ずしも教師の側でよく準備のできたクラスになるという保証はできません。完成度の高いクラスを繰り返すよりも、学ぶ側と一緒に冒険的なクラスを作る方がよいでしょう。


SCHEDULE

12/6
12/9
授業の概要説明、文献紹介
「神学」とはどのような学問か
12/13
12/16
現代神学は何を問うてきたか
ブルンナー
12/19
1/6

1/10
1/13

1/17
1/20
Guest Lecturer: Professor David Hall (Harvard Divinity School)

1/24
1/27
ハークネス

1/31
2/3

2/7
2/10

No class (Entrance Exam)
2/14
2/17

2/21
総括


REQUIREMENTS

 上述の通り、この授業には学生の主体的な貢献が必須になります。授業には必ず出席すること。学期中に一度、グループで発表を担当してもらいます。期末レポートは、A4用紙10枚以内。詳細は、授業が進行するうちに説明します。評点の配分は、発表が3割、積極的参加による授業への貢献度が3割、期末レポートが4割です。ちなみに、前回(2003年度)の GPA は、A=10人、B=11人、C=6人、D=3人、E=4人、計 34人で 2.59 でした。


REFERENCE

・ウィリアム・ホーダーン『現代キリスト教神学入門』(一部プリントで配布)
・Rosemary Skinner Keller, Georgia Harkness: For Such a Time as This (1992)
・エーミル・ブルンナー

『出会いとしての真理』(出版準備中の翻訳原稿を用いる)
『正義――社会秩序の基本原理』(聖学院大学出版会)
『教義学3上』(著作集4巻)
「決断の中にある日本」「一学生の見たブルンナー先生」(著作集6巻)
・カール・バルト
「ハルナックとの往復書簡」(著作集1巻)
『否!――エーミル・ブルンナーへの答え』(著作集2巻)
『ローマ書』(著作集14巻)(平凡社の文庫本あり)
・ラインホールド・ニーバー
『光の子と闇の子』(聖学院大学出版局の新版あり)
『アメリカ史のアイロニー』(聖学院大学出版局の新版あり)
・Georgia Harkness
Conflicts in Religious Thought (2nd ed. 1949)
The Modern Rival of Christian Faith (1952)
Foundations of Christian Knowledge (1955)
Christian Ethics (1957)

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