HRe105J 神学概論I Autumn 2003
 
OBJECTIVES
 
 今回は、「アジア神学」という主題を選びました。キリスト教はその成立以来、ギリシア・ローマ、ヨーロッパ、アメリカという各地各文化を経てそれぞれに神学を産み出してきたが、さて21世紀を迎えたアジアではどのような神学が生まれ得るか。それがこの授業の焦点です。
 この授業は、私にとっても少し冒険です。これは従来のキリスト教神学からは少し距離を置いた伝統批判的な神学です。ICUの授業で扱うのも初めてだし、週2回午前中のクラスになったのも初めてです。こういう時の教師の混乱ぶりを見たい人にはおすすめのコースです。ただ、これは日本ではまったく顧みられていませんが、日本以外のアジアやアメリカでは盛んに論じられている分野です。すでにここに、「アジア神学」の問題が一つ提起されていますが、それはゆっくり論ずるとしましょう。今回の授業は、昨年リーヴ中に私がアメリカで教えたコースを学部学生のために作り直したものです。はて、日本とアメリカの学生の反応にどういう違いがあるか、私の方でもみなさんの混乱ぶりを楽しみに見ようと思っています。
 
 
CLASS SCHEDULE
 
 序論
 
  授業の概要説明、文献紹介
  「神学」とはどのような学問か
  神学を「文脈化」する
  「アジアの神学」とは何か
  神学と伝統・正統
 
 本論
 
  パク:「罪」の補完概念としての「恨」
  ソン:「応報思想」を超えた贖罪理解をめざして
  小山:「水牛神学」と「天皇制批判」
  リー:「陰陽哲学による三位一体論」とフェミニズムの相克
 
 総括
  文脈化の6類型
  宗教混淆・二重信仰
  歴史的キリスト教
  なお残る問い
 
 
TEXT
 
 現在鋭意準備中ですが、購入できる文献が少なく、図書館にも所蔵されていないものばかりなので、プリントで配布する予定です。
 
 Andrew Park, The Wounded Heart of God (Abingdon Press, 1993)
 Jung Young Lee, The Trinity in Asian Perspective (Abingdon Press, 1996)
 Kosuke Koyama, Mount Fuji and Mount Sinai (Orbis Books, 1984)
 Kosuke Koyama, Water Buffalo Theology (Orbis Books, 1974; 2nd ed., 1999)
 小山晃佑『裂かれた神の姿』(日本基督教団出版局、1996年)
 C. S. Song, Jesus, the Crucified People (Fortress Press, 1990)
 ソン『イエス――十字架につけられた民衆』(新教出版社、1993年)
 北森嘉蔵『神の痛みの神学』(新教出版社・講談社、初版1946年)
 Kitamori Kazoh, Theology of the Pain of God (John Knox, 1965; SCM Press, 1966)
 Mark Mullins, Christianity Made in Japan (Univ. Hawaii Press, 1998)
 Robert Schreiter, Constructing Local Theologies (Orbis Books, 1985)
 Stephen Bevans, Models of Contextual Theology (Orbis Books, 1992; 2nd ed., 2002)
 
 
COURSE REQUIREMENTS
 
1 授業参加
 
授業には必ず出席すること。発言や質疑などの積極的な参加を評価します。テキストが準備でき次第、順にプリントで配布します。指定された部分を読んだ上で、自分なりの問いをもって授業に臨んでください。この授業は、私の講義が中心ですが、その方向を左右するのは学生のみなさんです。
 
2 Response Paper
 
みなさんの授業参加を促すため、毎週Response Paperを書いてもらいます。火曜日の授業終了後、水曜日正午までに、Eメールで私のところに提出してください。件名に<HRe105>と入れること。自動振り分けを使いますので、件名を間違えるとゴミ箱行きになってしまいます。時間厳守。メールのタイムスタンプでそれ以降に提出されたものは原則として読みません。受け取ったメールはそのまま印刷しますので、添付文書ではなく、メール本文に<テキスト>形式で直接書いてください。内容は、その日の授業で論じられたことへのレスポンスです。長さはA4用紙一枚にプリントアウトできるように。最大2千字以内、というところでしょうか(ちなみに、この段落は約5百字です)。前半は私が出す特定論題へのレスポンス、後半は授業の中から自由にトピックを選んでください。次の授業ではそれらのいくつかを取り上げて論じます。質問形で書かれたものにはその時にお答えします。(なお、これも初めての試みなので、受講者数や実際の経過を見た上で、より適切な方法を考えて変更するかもしれません。)
 
3 期末レポート
 
講義や討論を踏まえ、問題設定を明確にしたレポートを提出すること。A4用紙10枚以内。評点の配分は、授業参加が3割、Response Paperが3割、期末レポートが4割です。先回はまったく別のテーマでまったく別の授業形式でしたが、結果はA=25人、B=17人、C=5人、D=2人、E=11人、計61人でGPA=2.67 でした。
 
なお、前回の授業効果調査で寄せられた学生からのコメントをご覧になりたい人は、A館のFD室で見せてもらえます。私にメールをくだされば、FD室からいただいたものをメールで転送してあげます。