GCFB411J: Religion and Philosophy of the West II (Spring, 2005), 5/F 6/F, H-307, Morimoto, A.


目的

 ガダマーの『真理と方法』を読む。特に歴史的存在としての人間を扱った第二部に焦点をあてる。

 ガダマーの主著『真理と方法』は、哲学においても神学においても、解釈学の現代的古典とされていながら、日本ではしばしば言及されるだけであまり読まれていない。邦訳されているのがいまだその第一部だけである、ということもその原因かつ結果の一端であろう。しかし、同書が人文科学の学びにとって本質的に重要な洞察を提供する書物であることは疑いを容れない。その現代的な妥当性を例示するかのように、2000年には新たに改訂英訳が出版された。これは本年1月にも新装版となって再版されており、英語圏でもいまだによく読まれていることがわかる。同書に展開された歴史的存在としての人間理解や、伝統・正統・権威・理性・先入見をめぐる考察は、ポストモダンの諸理論が論じられる今日でこそ意義をもつ、というのがさしあたっての確信である。どうせ読むなら、十年後には忘れられているような書物ではなく、歴史と人生の時を経ていっそうその意義を確かめられるような書物を読もうではないか。

注意

・このクラスでは、英訳第二版を用いて、邦訳のない第二部を読む。第一部は日本語で読めるが、必ずしもその内容をすべて理解して前提しなければ第二部が読めない、というわけではない。また、晦渋なドイツ語の哲学書の場合、英語の方が読みやすいことも多いので、英訳を用いることでかえって理解が進むのではないかと期待している。もちろんドイツ語で読める学生はドイツ語でどうぞ。

・二次資料で手っ取り早くその梗概を理解するのでなく、まずガダマーのテクストそのものにあたり、じっくりと取り組むことでその真価を味わいたい。受講学生を主体に、毎週担当を割り当てて読み進むつもりなので、まとまった時間を準備に当てる決意をもって授業に臨んでもらいたい。

・なお、意欲ある学部高学年生の登録も受け入れる。

テクスト

Hans-Georg Gadamer, Truth and Method, Second Revised Edition (New York: Continuum, 2000) ――Amazon.co.jp で買うと\1,621-, Amazon.com で買うと$11.53-です。受講予定の学生は、各自早めに注文しておいてください。
 
参考文献

・『真理と方法1――哲学的解釈学の要綱』轡田収他訳(法政大学出版局、1986年)これは第一部のみの訳。

・なお、ペゲラー編『解釈学の根本問題』瀬島豊他訳(晃洋書房、1977年)には、『真理と方法』第二部のごく一部が訳出されている。

・他に、晩年のインタヴューによる小品『ガーダマーとの対話』(未来社、1995年)や、『哲学・芸術・言語――真理と方法のための小論集』(未来社、1977年、2001年復刊)に含まれる論文などが一部参考になるかもしれない。

・その他の文献は、必要に応じて授業内で示すが、このクラスの目的は、あくまでも『真理と方法』第二部を読むことである。


(6/29/2005 付記)

授業課題の一部として学生が描いた『真理と方法』内容略図のうち、見やすいものを2枚載せます。一部固有名詞に誤記も見られます(クラデニウス)が、邦訳のない第二部を鳥瞰するには便利です。どちらも著作権は学生本人にあります。
Two easy-to-understand charts of Gadamer's Truth and Method Part II. The two students kindly gave me permission to put up their work on this homepage.

・服部紘司: Chart (PDF: 97KB)

・Cathy Francis: Chart (PDF: 195KB),   Accompanying Document (MS-Word: 31KB)