GCA476J Human Rights II(人権論 II)Spring 2002
 
1. Objectives
 
昨年9月11日以来、政治や宗教やイデオロギーの対立について論じられることが多くなった。自分と異なる考え方への寛容は、どのようにして生まれ、基礎づけられ、育まれるのか。この授業では、人権思想の淵源にある内面的自由の問題に焦点をあてる。はじめに「寛容」「信教の自由」「政教分離」という3つの概念の相関関係を整理した上で、現代リベラリズムの枢要課題とみなされている「寛容」論の論拠をいくつか類型的に析出し、それぞれの今日的な妥当性を比較する。その過程では、歴史を遡ってロジャー・ウィリアムズの軌跡と思想にも触れておきたい。ただ、これまでは、公立学校での祈祷問題など、憲法修正第一条をめぐる代表的な憲法判断が積み重ねられてきた米国の諸例を参照にしてきたが、今回はもう少し今日的に、リベラリズムとその宗教観の限界について問い直すつもりである。
 
 
2. Schedule (Subject to Change)
 
3. Requirements
 
a. このクラスは基本的にゼミ形式でおこなわれます。学生はそれぞれ課題図書を精読し、クラスで発表すること。毎週まとまった時間を準備に充てる必要があります。
b. 学期末にはレポートを課します。成績の評価は、毎週の発表が6割、期末レポートが4割の配分です。
c. 第一回の授業で、授業の目的と概要を説明し、基本的な概念の枠組みを紹介した上で、発題の分担を決めるので、必ず出席して下さい。
 
 
4. Reference(今回は d. に重点をおくので、a. b. c. は参照用)
 
a. 米国憲法と政教分離の諸理論
 
 ・マーネル『信教の自由とアメリカ』(新教出版社)
 ・熊本信夫『アメリカにおける政教分離の原則』(北海道大学図書刊行会)絶版
 ・William Lee Miller, The First Liberty: Religion and the American Republic (Paragon House Publishers, 1985)
 ・Terry Eastland, ed., Religious Liberty in the Supreme Court: The Cases That Define the Debate over Church and State (Eerdmans, 1993)
 ・George Anastaplo, The Amendments to the Constitution (Johns Hopkins U Press, 1995)
 ・Bette Novit Evans, Interpreting the Free Exercise of Religion: The Constitution and American Pluralism (U of North Carolina Press, 1997)
 ・Monsma and Soper, eds., The Challenge of Pluralism: Church and State in Five Democracies (Rowman & Littlefield Publishers, 1977)
 
b. ロジャー・ウィリアムズ
 
 ・久保田泰夫『ロジャー・ウィリアムズ』(彩流社)
 ・Roger Williams, Complete Writings, 7 vols., New York Edition
 ・Timothy Hall, Separating Church and State: Roger Williams and Religious Liberty (U Illinois Press, 1998)
 ・Perry Miller, Roger Williams: His Contribution to the American Tradition (Bobbs-Merrill, 1953)
 ・Edwin Gaustad, Liberty of Conscience: Roger Williams in America (Eerdmans, 1991)
 
c. 人権論と寛容論
 
 ・高木他編『人権宣言集』(岩波書店)
 ・イェリネック対ブトミー『人権宣言論争』(みすず書房)旧版もある
 ・種谷春洋『近代寛容思想と信教自由の成立』(成文堂)
 ・カメン『寛容思想の系譜』(平凡社)絶版
 ・ロック(中央公論社『世界の名著』32)
 ・メンシング『宗教における寛容と真理』(理想社)
 ・トレルチ「近代世界の成立にたいするプロテスタンティズムの意義」『著作集』第8巻(ヨルダン社)
 ・近藤勝彦『デモクラシーの神学思想』(教文館)
 
d. リベラリズムと宗教論
 
 ・ロールズ『正義論』(紀伊国屋書店)
 ・サンデル『自由主義と正義の限界』(三嶺書房)
 ・田丸・星川・山梨『神々の和解:21世紀の宗教間対話』(春秋社)
 ・メンダス『寛容と自由主義の限界』(ナカニシヤ出版)
 ・Michael Walzer, On Toleration (Yale U Press, 1997)
 ・Hunter and Guinness, eds., Articles of Faith, Articles of Peace (Brookings, 1990)
 ・J. Judd Owen, Religion and the Demise of Liberal Rationalism: The Foundational Crisis of the Separation of Church and State (U of Chicago Press, 2001)