PHR233J キリスト教倫理:アメリカの宗教と倫理
Autumn 2010, H-170, 567/W, Instructor: A. Morimoto
THEME
Billy Sunday と20世紀初頭のアメリカ
OBJECTIVE
まずは映画を観ようではないか。いつもわたしの「アメリカ・キリスト教史」で見せている Elmer Gantry という映画 (1960) である。そこに、20世紀初頭のアメリカを席巻したある型破りのキリスト教伝道者が登場するが、そのモデルとなったのがビリー・サンデーである。孤児院に育ち、大リーグ野球選手となって活躍、その巨額の年俸を振って伝道者となり、やがてリヴァイヴァル説教家として全米に知られるようになる。
乱暴な仕草で壇上を走り回る過激な説教スタイルで、インテリには嫌われたが大衆には好まれ、大統領や政財界の有力者とも親しく、今日のアメリカ的なキリスト教の範型を形作った一人である。時代はアメリカが田舎の倦怠から都市の繁栄へ、そして第一次大戦と禁酒法へと進むときである。彼を通して、反知性主義 (Anti-intellectualism) の伝統、戦争とナショナリズム、資本主義的ビジネスとしての野球、男性性と女性性などをめぐるアメリカの倫理的な言説が浮かび上がる。それを今日のわれわれの目で検証してみたい。
今回取り上げるテーマは、わたしもはじめて授業として扱うので、内容をどのように配分したらよいか、実はまだよくわかっていない。まずはビリー・サンデーという人物像に寄り添うことで、地に足のついた視点をもち、そこからアメリカ・キリスト教の展望と問題を見据えたい。この授業の目的は、そもそも「リヴァイヴァル」(信仰復興)という現象がみられない日本で、それが現代アメリカ社会の基底をどのように規定しているかを知ることである。
SCHEDULE
9/8 |
導入 Billy Sunday とは誰か (映画 Elmer Gantry)グループ分け |
9/15 |
Chap. 1 (「リヴァイヴァル」とは何か、リヴァイヴァルの歴史的始点) |
9/22 |
Chap. 2 (生い立ちから大リーグ選手へ、リヴァイヴァルの歴史的発展) |
9/29 |
Chap. 3 (大衆伝道者として出発、ビジネス化した市場型宗教) |
10/6 |
Chap. 4 (アメリカ的価値としての野球と禁酒法) |
10/13 |
Chap. 5 (女性化したキリスト教への反動としての男性性) |
10/20 |
Chap. 6 (戦争と愛国心、反戦論者との対比、黒人・移民への態度) |
10/27 |
Chap. 7 (後代への影響、20世紀テレビ伝道者の台頭とスキャンダル) |
11/10 |
総括 (今日の代表例 Joel Osteen) |
REFERENCE
主テキスト
- Robert F. Martin, Hero of the Heartland: Billy Sunday and the Transformation of American Society (2002)
(Amazon.co.jpでも1800円程度で買えますが、Indiana University Press から直接購入します)
参考文献 (発表者は以下を参照することが不可欠です)
- William McLoughlin, Jr., Billy Sunday Was His Real Name (1955)
- Roger Bruns, Preacher: Billy Sunday and Big-Time American Evangelism (1992)
- Lyle Dorsett, Billy Sunday and the Redemption of Urban America (1990)
- Elijah Brown, Billy Sunday 1862-1935: The Life and Work of the Baseball Evangelist (2006)
- Ann Douglas, The Feminization of American Culture (1977)
- Clifford Putney, Muscular Christianity: Manhood and Sports in Protestant America (2001)
- バーバラ・エーレンライク 『ポジティブ病の国アメリカ』 (河出書房新社、2010年)
参考ウェブサイト資料 (Moodle に載せます)
- Charles Finney, What a Revival of Religion Is (1835)
- Henry Van Dyke, The American Birthright and the Philippine (1898)
- Harry Emerson Fosdick, The Unknown Soldier (1933)
REQUIREMENTS
- 授業には必ず出席すること。発言や質疑などの積極的な参加を評価します。導入後は、毎回発題とディスカッションを行います。
- 授業時間外での主体的な学びを促進するため、Moodle を使用します。受講学生は全員登録してください。登録キーは ****** です。授業に関係するアナウンスもここで行います。
- 毎週の課題テキストをよく読み、前日 20:00 までに Moodle 上のクイズに答えること。
- 学生はグループに分かれ、学期中に一度プレゼンテーションを行ってもらいます。長さは発表が30分、それに続く質疑が30分、くらいに考えてください。効果的な発表のために、グループ内での学習と打ち合わせが重要です。グループメンバーには、プレゼンテーションについては同一の評点が与えられます。目的は、以下の4点。
- テキストの内容をまとめてわかりやすく説明し、
- そこから生まれる問いを立て(授業スケジュール参照)、
- 上記の参考文献や参考資料などを調べることにより、
- その問いに自分たちなりの答えを与えること。
発表のレズメは、前日 20:00 までに Moodle にアップすること。
- 学期末には、授業での発題や討論や講義を踏まえて、論点を明確にした短めのレポートを書いてもらいます。詳細は、授業の中で指示します。
GRADES
評点の配分は、質疑や討論などによる授業への貢献度が4割、発題が4割、期末レポートが2割。前回このクラスがオファーされたのは2006年で、その時はまったく別のテーマ(同性愛)でしたが、GPAは、A=5人、B=16人、C=7人、D=1人、E=0人で、2.86(計28人)でした。